ベルリン国際映画祭レポート⑦ <最終回> 2.16.2015
ベルリン映画祭の最終日、主な賞関連も全て発表されました。残念ながら、「フタバ〜」は受賞を逃しました。Hollywood Reporter やVariety 誌などで批評家から高く評価されたのですが、賞に結びつかなかったのは無念で仕方ありません。しかし、上映会場で受けた絶賛、特に福島の原発避難を今からも撮り続けなければいけないと私が言ったときに受けた、会場が揺れんばかりの大きな拍手は忘れがたく強烈で、今後の糧になってゆくと思います。
Golden Bear 金熊賞は、Jafar Panahi監督(イラン)の「Taxi」。監督に20年間出国を禁じ、軟禁状態を強制しているイラン政府に対してのベルリン映画祭からの強いメッセージという政治的な側面もありますが、作品自体がとにかく傑出していたそうです。日本でも必ず公開されるでしょう。
また、空いた時間に橋本プロデューサーと、ポツダム広場にあるホロコースト慰霊施設(虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑と情報センター)へ行きました。ナチスにより虐殺された600万人のユダヤ人の、その一つ一つの家族や出自を刻々と刻みつけ、差別と暴力は決して繰り返してはならない、というドイツ社会の反省への執念が感じられました。
過去の加害を記憶に刻み付けようとするドイツの、記憶の文化は凄まじいものがあります。その後、フォーラム部門で「Out of the Forest」(Limor Pinhasov Ben Yosef & Yaron Kaftori Ben Yosef)というナチスによる、リトアニアでのユダヤ人虐殺のドキュメンタリーを見ました。リトアニアの森の中での”pit”(大きな穴)でいかに虐殺が行われ、いかに現地の人々がそれに協力してしまったのか、を語る強烈な作品でした。加害の事実について映像で追求する作品が、日本はまだ圧倒的に不足していると感じました。
15日の午後に、橋本プロデューサーとともに帰国便へ乗りました。
いろいろ強烈な刺激を受けた映画祭でした。Wim Wendersが名誉金熊賞を受けたスピーチで言いました「Lifetime とFilmtime をシンクロさせてゆくのが自分の人生であり、周りの友人、スタッフ、被写体の人々の人生であった。それがcinema の輝かしい魅力だ」と。まったく同意見です。上映時に、私のLifetime =Filmtimeとシンクロしてくれた様々な人の顔が浮かんだ映画祭でありました。その中心に双葉町の方々がいたことは言うまでもありません。感謝の念とともにベルリン、テーゲル国際空港を発ちます。心よりありがとう!
終
舩橋淳